2012年を振り返る【今年の映画鑑賞BEST5】

さて、年の瀬ですね。
昨年は年を越すまでにこういった振り返り系の記事が書き終わらず、新年の2日くらいまで書いていたような気がします。今年も12/31にはなってしまいましたが、まだ夕方なので書ききってやろうと思います。
ということでまずは演劇や映画などの「観たもの・鑑賞系」の振り返り!
今年の個人的BEST5を選出して振り返ってみようと思います。
あ、独自の視点とか無いよ!ふっつーだよ!
■映画編■
第5位『SRサイタマノラッパー~ロードサイドの逃亡者~』
今年唯一2回見た作品。
最初は公開初日に行ったんだけど、会って2回目くらいの人と一緒に行ってその人の反応が芳しくなかったり、単純に自分がこの映画の肝である「歌の使い方」をスルーしてしまい、「なんだかものすごいエネルギーだけどどう受け止めていいのやら…」と租借しきれず、楽しめずにいた。で、思って2度目に一人で行ったら例の超ロングの長回しからのお馴染みの『俺らSHO-GUNG』が聞こえる流れでやられた。
あと同居人・淺越の買ってきたサントラを聞いたら『Ending』の次に収録されてる「Keep on Moving」に泣かされた。プロとかアマとか東京とか地方とか関係なく、好きなものを好きで居続けること、やりたい表現をやる続けることをロジック抜きで全肯定していて、なんだかんだで勇気が出る名曲。
第4位『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る』
3位との間で超悩んだんだけど、4位にしました。
2008年のPerfume以降アイドルを好きになっている自分は、AKBのことも「やっぱりすごい頑張ってるすごい人達だよ」とは思ってはいたのだけど、この映画を見たらそれが尊敬に変わった。
「スタッフが不甲斐ないだけの人災だ」とか「無理して過酷っぽく撮ってるだけ」って批判もあるかもしれないけど、それでも、この身の回りのことも見えないような目まぐるしさの渦中にいる彼女らの言葉は、ステージでの姿はとても胸を打つ。
皆が語る、西武ドームでの前田敦子の過呼吸からのフライングゲットは無条件で涙が出るし、ラストの出撃シーンみたいに点呼とってステージに出て行く姿からのエンディング曲『ファースト・ラビット』は超カッコよかった。
主にこの映画の評価はライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルの放課後ポッドキャストの影響も大きいかもしれないのだけど。この映画について語っている様がすごく楽しい。ラジオでも自分達でも。ある意味一番シネマハスラーの影響を受けた映画かも。
第3位『007:スカイフォール』
ダニエル=クレイグのジェームズ=ボンドが超カッコいい。
もともと自分にとっての007って、テレビでやってるのをチラ見する程度のもので、能動的に1作品を丸ごと見たことは無い作品だった。「なんか昔からあるよね」程度の認識。
だけどやたら評判のいい本作なので観てみることに。町山智浩が「本作見る前に見とけ!」と薦めてたらしい『ゴールドフィンガー』と、ダニエルクレイグ慣れするために借りた『カジノロワイヤル』だけ予習してから映画館へ。
そしたら…超楽しかった。こんな007ビギナーの自分にとっても温故知新やシリーズへのリスペクトがはっきり見て取れるくらいだったし、あんな台詞、あんなアイテム、あんな展開やそのときのあの音楽には映画館でガン上がりしてしまった。そして、無性にスーツを着たくなって帰宅(笑)いや、トムフォードのスーツでダニエル=クレイグの肉体だからカッコいいのは百も承知なんだけど。
第2位『おおかみこどもの雨と雪』
超いい映画であると同時に、個人的にとても喰らってしまった。
前にもこの記事で書いたけど、大事な人と一緒にちゃんと自分の生活を構築していく様が、あんなに魅力的に書かれてしまうと、現在の自分を省みて戸惑ってしまうよ…。
日々の暮らしや大切な人との絆などのいわゆる「生活」を脇に置いといて、非日常を作り出す自分のやりたい「企画」にばかり目を向けてしまう、「ハレ」に逃げてしまう節がある自分の価値観を、そのクオリティでもって揺るがされるっていう…。
そして、「親であることの充実感と孤独」っていう、自分が重視していない部分があんなに感動的に描かれるなんて。
さらに言うと、これを冨坂家の家族それぞれが見に行ったタイミングで、自分含め成人した子供達が揃って母親に心配をかける出来事があり、映画内の「子供の自立」であんなに感動したばっかりなのに現実で子供達の不甲斐なさを目撃した母親の心境はいかばかりか…と察して余りある。おかあさんごめんなさい。
まぁ色々と、「痛い痛い」という世間一般と違う目線で評価して忘れがたい映画になりました。
第1位『高地戦』
文句なしに映画館で一番興奮した映画。
演出の味付けが若干濃いめだったり、伏線を回収しすぎて世界が狭く感じたり、出てくる奴等が美男美女すぎ、って気もしなくは無いけど、「…でもそんなの関係ねぇ!」って感じ。だってそれってこの映画をエンターテイメントとして当てるぞ!って気概じゃん。
これまた予習のために南北分断ものの作品を沢山見てから臨んだんだけど、おれやっぱりこのテーマに弱いわ。いや、全然グッと来てる場合じゃない現実の問題なんだけど、物語として破壊力持ちすぎでしょ、この状況。
南北分断サスペンスアクションの名作『JSA』の例に漏れず、やっぱり北朝鮮と韓国が現場の兵士レベルで交流しちゃってたり、友情のようなものが芽生えたりするのに微笑ましく思うんだけど、それだけに終わらない悲劇が待っている。
公開終了したからネタバレしちゃうけど、そんな南北分断ものでありながら「南北ともに現場は停戦を望みつつ渋々やってた戦争」で「ようやく停戦が決まって歓喜した直後」に「でも停戦は12時間後に有効になります、それまで陣取り合戦を続けなさい」と、停戦を知った上でやりたくも無い戦闘(しかも最後の最後だからと一番激しい総力戦)を強いられる前線の悲劇がやばい。
「もう戦わなくってもいいんだよ!バーニィー!」って何度心の中で叫んだことか!面と向かって殺しあってる相手は北朝鮮の兵士であり、韓国の兵士だけど!本当の敵は!「戦争」そのものだよ!と誰もが心の中で叫びながら殺しあう悲劇。これ残酷すぎでしょ。
Twitterでも書いたけど、そういう意味で『0080ポケットの中の戦争』がポケットに収まりきらず高地一杯に充満してる映画。最低の戦場を舞台にした最高の映画。戦争映画とポケ戦とイデオン発動編が好きな人はマスト。
【総評】
今年は こんな感じ で19本を映画館で観た。ウィークエンドシャッフルのシネマハスラーで当たったのばっかり、しかもハスラーに限らず評判を聞いて良さそうなのばっかり行くという安全パイすぎる映画鑑賞体験でした。おかげさまで面白い作品ばっかり観た年だったけど、来年は自分の嗅覚で探り当てたいところですね。

月とスイートスポットと私

ヨーロッパ企画『月とスイートスポット』鑑賞。
東京千秋楽だしこれだけは言っちゃうけど、サマータイムマシンブルース観て憧れた人には必見の作品だった。アレの発展系だし、視点を「未来→過去」に限らず、時空の狭間を現在、過去、過去の過去が行き交いモヤモヤし合う“くだらないSF”の最新進化系。
ただ、終盤のアレに関しては俺も『お父さんをください』でやったからな!と意地を張ってしまって素直に笑えなかった(笑) いや、面白かったけど。
思えば、かつての俺は三谷幸喜作品に触発されてオリジナルのシチュエーションコメディを志し、ヨーロッパ企画に憧れて劇団を立ち上げたものでした。
そっからはご多聞に漏れずヨーロッパフォロワー的作品を重ねてしまった時期も長く、そのときの作品が一番恥ずかしくて過去改変したいくらいなんだけど、ここ最近(ルデコあたりから)ようやくフォロワーを脱しはじめ、最新作『ナイゲン』では遂にヨーロッパ企画の毛色なんて全く見えない、むしろ「国府台高校」っていう地金と三谷作品『12人~』を掛け合わせたような作品が出来たわけで。
そんな今のタイミングで、自分がヨーロッパ企画と出会った『サマータイムマシンブルース』の発展系を観たというのは、何か感慨深いものがあるのです。
文章にして書いててもうまく言えないというか関係無いというか、こじつけに見えるのだけど。
とにかく、発売したら久しぶりにヨーロッパDVDを買おうと思う。

コーヒーカップオーケストラ『吉岡再生』見てきた

●コーヒーカップオーケストラ
もう日付的には2日前になっちゃうけど、28日に塩原さんの出てるコーヒーカップオーケストラ『吉岡再生』を見てきました。
自分は、コーヒーカップオーケストラといったら、コントレックスの宮本一人舞台で宮本さんが一人でやった告白のコント、あの終わり際の可笑しさ・切なさこそが本質な気がしてるので、この路線だよなぁ、と。
あと単純に、色んなことが無駄すぎて意味不明すぎて面白かったです。
泣き笑いだったのか笑いすぎて泣いたのか不明だけど、なんか見ながらちょっと泣いてました。そして、鬼塚ちひろ×斉藤コータ×モリサキミキのコラボはここ最近の芝居で一番笑ったし、ここに関しては確実に笑いすぎて泣いた。
モリサキさんが完全に開眼してたのが印象的。今までなめてた!ごめん!って言いたくなるほど。
そして、以前に乱雑天国でコントレックスに出て頂いた中尾ちひろさん(温泉きのこ)が、驚くほどお芝居が上手くて、キャラというか居ずまいに安定感があった。良かったなー。
あ、塩原さんはキレ塩原パターンでした。キレてるとき、振り抜いてるときはいいっすね。逆に抑えてるときに宮本節で喋るのにすげー苦労してるのが見えた。
今回は後半部分で意外と「お話」に一気に舵を切り、前述の「宮本さんのあの感じ」を前回にしてくるのだけど、その優しい苦い感じだからこそ、ストーリーの進行自体はサクサク進んで欲しかったな、とも。
舞台も711とは思えないくらい色んな仕掛けが会ったんだけど、個人的にはそれよりも、CCO特有の色んなものを省略したり開き直っちゃう、スムーズでスマートな舞台の使い方をして欲しかったなぁ…。
とりあえずお勧めなのは間違いないです。
みんな、シアター711へ急げ!
コーヒーカップオーケストラ2012冬『吉岡再生』
2012年11月28日(水)~12月3日(月)
下北沢シアター711にて
詳しくはこちら
下ネタで青春で男のコでコメディ…なんて言ったら、20代の男が作る小劇場演劇には掃いて捨てるほどありそうだけど、やっぱり何かココにしかない独特の味(なんだろう、可愛げ?圧倒的可愛げ?)があって素敵なので、そしてちょっとは両想いらしいのでコーヒーカップオーケストラと一緒になんかやります。2013年。まだ「なんか」としか言えないけれど。
そしてなんというぬるレビュー!小学生の感想みたいになっちゃったけどもういいや!

おおかみこどもの雨と雪

いまガチッと劇評書くリソースがないのだけど、Twitterで書ききれなかったことを残しておく。
感想文だしポエムだしチラ裏ですが。
おおかみこどもの雨と雪』を観た。
『時をかける少女(2006)』『サマーウォーズ(2009)』の細田守監督作品だから注目作だし、個人的にも楽しみにしてたのだけど、そういう「作品の出来」とか「作品のつくり」とかじゃなく、個人的に喰らってしまった。
この映画は、「母と子の絆」とか「人間讃歌」とか言われていて、そこまで大それてなくても自分にとっては間違いなく「生活讃歌」に感じられた。
多少ドラマチックに脚色されてたり、美化された田舎暮らしだったりはするんだけど、普通に暮らしていくっていうことがとても美しく見せられる。
そしてそれが、いつか聞いたラジオで細田監督が言ってた「命がないものに命を吹き込むのがアニメーション」「それにより何気ない風景や動作がドラマチックに立ち上がっていく、それがアニメ的快感」なんだろう、と非常に納得した。
今回は、時もかけないし世界も救わない。「号泣!」とか「最っ高!」みたいに激しくはないけど、自分の中では細田作品で一番刺さった。
というのも、「日々を暮らしていくってそれだけで素晴らしいことだよ」って主張にあれだけの破壊力・説得力を持たされてしまうと、困るのだ。ちょっと首肯しそうになったけど、自分の立場的にそれはダメなんだ。
自分は基本的に中学時代も高校時代もそのあとも、なにかやりたいことや目標、簡単に言うと「企画」みたいなのが目の前に無いとダメなタイプで、あくまで日常はそのためのチャージ期間、ってスタンスだった。むしろ楽しみな「企画」のための対価、代償とすら思っていた。
だから、「やりたいことが出来ないなら生活も人生も意味が感じられない」(もちろん自殺願望なんてさらさら無いんだけど)とすら思っている人種だ。
だけど、最近離れて住んでいる家族に色々あったり、その他生活全般の条件を考えることが多く、そんな中で斯様な「生活讃歌」を唱えられると、しかもそれに喰らってしまうと、色々揺らいでしまう。
もちろん夢とか目標とか企画とか、そういったものと日々の暮らしがトレードオフか、っていうとそんなことは無いのかもしれないけど。
でも「生活を大事にしながら演劇もやってくよー」ってスタンスの人(正社員とかフリーターとか問わず)があまり好きじゃなかったり、というか信じてなかったりするし、そういった瞬間に何かの速度が落ちる気がして、じゃないな、自分の何かが揺らぐ気がしている。
なので、その完成度によって「日常大事」「家族大事」を信じ込ませたこの作品が、ちょっと憎くもあり、気になって仕方ない。
でも超好き!もっかい観たい!くそー!

【映画】2012年に観たもの

1/7(土) 『宇宙人ポール』 渋谷シネクイント 11:20
2/6(月) 『DOCUMENTARY of AKB48』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 20:45
3/20(火)『ドラゴンタトゥーの女』 新宿ミラノ3 18:10
3/23(金)『ヒミズ』 吉祥寺バウスシアター 18:30
3/25(日)『マインドゲーム』 新宿バルト9 21:00
3/26(月)『サウダーヂ』 渋谷オーディトリウム 14:35
4/14(土)『SRサイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者』 渋谷シネクイント 17:00
4/23(月)『バトルシップ』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 21:45
5/1(火)『SRサイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者』 渋谷シネクイント 21:20
5/17(木)『ドライヴ』新宿バルト9 25:30
6/1(金)『サニー~永遠の仲間たち~』 ヒューマントラストシネマ有楽町 19:00
8/1(水)『おおかみこどもの雨と雪』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 15:20
8/1(水)『ダークナイト ライジング』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 17:50
8/19(日)『桐島、部活やめるってよ』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 09:25
10/15(月)『アウトレイジ ビヨンド』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 21:55
11/15(木)『悪の経典』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 20:40
11/23(金)『高知戦』 シネマート新宿 13:45
12/1(土)『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 18:00
12/26(水)『007:スカイフォール』 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 21:45

【演劇】2012年に観たもの

1/21(土)ジエン社『アドバタイズドタイラント』日暮里d-倉庫 19:30
2/5(日)MU『×/ママさんボーリング/今夜だけ』下北沢駅前劇場 17:30
2/10(金)PARCOプロデュース『90ミニッツ』PARCO劇場 19:00
2/13(月)ロロ『LOVE02』こまばアゴラ劇場 15:00
3/17(土)Cui?『きれいごと。なきごと。ねごと。』新宿眼科画廊 19:30
3/24(土)翠組『集団面接』池袋シアターグリーンBASEシアター 19:00
4/17(火)MCR『俺以上の無駄はない』下北沢駅前劇場 19:00
4/28(土)たすいち『FIRE LIGHT』吉祥寺シアター 19:30
5/3(木)サマーソニックシアター『のんべぇい!』上野ストアハウス 19:30
5/13(土)タクトプレイ・プロジェクト『パパ・アイラブユー!』下北沢駅前劇場 19:30
5/17(木)劇団コーヒーカップオーケストラ『チャンス夫妻の確認』王子小劇場 19:30
6/1(金)8割世界『ウェディング、ラン』中野MOMO 14:00
6/15(金)翠組『放課後サマージャム』池袋シアターグリーンBASEシアター 14:00 ★冨坂脚本提供
6/24(日)帝京大学ヴィクセンズシアター『short 4 you』帝京大学10号館1062
7/6(金)風琴工房『記憶、或いは辺境』池袋シアターKASSAI 19:30
7/14(土)範宙遊泳『東京アメリカ(再演)』こまばアゴラ劇場 14:00
7/22(日)後藤慧・景浦大輔『後藤慧・景浦大輔二人会』トリトリオフィス稽古場 13:00
7/22(日)重力/Note『職業◎寺山修二1935~1983/1983~2012』横浜STスポット 19:00
7/28(土)サイバー∴サイコロジック『赤鬼-レッドパージ立山-』下北沢駅前劇場 19:00
7/29(日)劇団ヤコウバス『イス』明治大学猿楽町校舎アートスタジオ 14:00
7/29(日)MU『MY SWEET BOOTLEG』乃木坂COREDO 18:00
8/10(金)電動夏子安置システム『また悪だくみをしているのね』池袋シアターKASSAI 15:00
8/10(金)ファルスシアター『パパ☆アイ☆ラブ☆ユー』池袋シアターグリーンBOX in BOXシアター 19:00
8/11(土)Torico Roll Cake『西日、新車に直撃』下北沢シアター711 14:30
10/5(金)MU『いつも心だけが追いつかない』乃木坂COREDO 19:30
10/6(土)バイヲチックリサス『送別会』渋谷Gallery LEDECO 5 19:30
10/14(日)犬と串『さわやかファシズム』王子小劇場 13:00
10/27(土)劇団SHOW&GO FESTIVAL『空から目線でテイクオフ!!』築地ブディストホール 19:30
11/5(月)DULL-COLORED POP『完全版・人間失格』青山円形劇場 19:30
11/10(土)MacGuffins『僕から見れば僕が正しい、君から見れば君が正しい』池袋シアターKASSAI 13:00
11/10(土)ジエン社『キメラガールアンセム/120日間将棋』池袋シアターグリーンBASE THEATER 18:00
11/18(日)梅酒が好きだな『Reversd-リバスト-』日暮里d-倉庫 13:00
11/20(火)ブラジル『行方不明』赤坂RED/THEATER 14:00
11/28(水)コーヒーカップオーケストラ『吉岡再生』下北沢シアター711 19:30
12/4(火)MU『週末たち』乃木坂COREDO 19:30 ★冨坂脚本提供
12/7(金)8割世界『ガラクタとペガスス』八幡山ワーサルシアター 14:00
12/15(土)山本タカ地獄のコント企画『イッパツ!!』 18:00
12/16(日)ヨーロッパ企画『月とスイートスポット』下北沢本多劇場 13:00
12/16(日)Mrs.fictions『15みうっちめいど』池袋シアターグリーンBASE THEATER 18:00
12/23(日)レティクル東京座『アタシのアンテナ終末論』新宿シアター・ミラクル 14:00
12/24(月)38mmなぐりーず『だから、1周年なんだってばぁぁぁぁ!!!!汗』王子小劇場 20:00

【劇評】イキウメ『太陽』

2011/11/26 イキウメ『太陽』観劇
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【上演データ】
《東京公演》
日時:2011/11/12(土)~27(日)
会場:青山円形劇場
《大阪公演》
日時:2011/12/2(金)~4(日)
会場:ABCホール
作・演出:前川知大
出演:浜田信也/盛隆二/岩本幸子/伊勢佳世/森下創/大窪人衛/加茂杏子/安井順平/有川マコト
【あらすじ】
四十年程前、
世界的なバイオテロにより拡散したウイルスで人口は激減し、政治経済は混乱、
社会基盤が破壊された。
数年後、感染者の中で奇跡的に回復した人々が注目される。
彼らは人間をはるかに上回る身体に変異していた。
頭脳明晰で、若く健康な肉体を長く維持できる反面、紫外線に弱く太陽光の下では
活動できない欠点があったが、変異は進化の過渡期であると主張し自らを
「ノクス」(ホモ・ノクセンシス = 夜に生きる人)と名乗るようになる。
ノクスになる方法も解明され、徐々に数を増やす彼らは弾圧されるが、変異の適性は
三十歳前後で失われる為、若者の夜への移行は歯止めが効かなくなった。
次第に政治経済の中心はノクスに移り、遂には人口も逆転してしまう。
ノクスの登場から四十年、
普通の人間は三割程になり、ノクス社会に依存しながら共存している。
かつて日本と呼ばれた列島には、ノクス自治区が点在し、緩やかな連合体を築いていた。
都市に住むノクスに対し、人間は四国を割り当てられ多くが移住していたが、
未だ故郷を離れず小さな集落で生活するものもいた。
ということで、おそまきながら前作『散歩する侵略者』で見始め、早速大ファンになった劇団、イキウメの新作公演。
圧倒的だった。
近未来、夜に生きる新しく強い人間「ノクス」と、昼に生きる古い人間「キュリオ(骨董品)」の間での差別・理解・被害者意識などの「共存」の問題を通して、人間の弱さやプライドや家族愛(というより血か?)を描く、静かで骨太で優しいSF作品。
『I am Legend(邦題:地球最後の男)』という定番、クラシックのSFが原案にはあるけれど、「人間が昼の種族と夜の種族に分かれた世界」というのは一般的ではない設定だろう。少なくとも身近ではない。
しかし、この作品は、世界中のどこの国でも、どこの民族でも、どこの集団でも通じる普遍性を持った、「理解」と「愛」の話だった。
それは、この設定が現在の世界のいたるとことに見られる人種・民族・貧富・格差・差別の問題を象徴していたからだろう。うん、一般的な設定じゃなくても象徴していれば普遍性は得られるのだな、というボンヤリ知っていたことの顕著な例。

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【映画評】『X-メン:ファースト・ジェネレーション』

●映画評:『X-メン:ファースト・ジェネレーション』
文字数:1873字
 超人気アメコミシリーズ、「X-メン」。おそらくほとんどの人が名前ぐらいなら知っている漫画だろう。筆者もそれに毛が生えた程度の知識で、前作などの映画版を観ていない状態で本作を観た。
 「X-メン」といえば、劇画調で、爪を出す虎柄の男や、目からビームを出す男や、肌が青い女などの超能力者が、敵味方に分かれて戦っている、簡単に言うとそんなコミックである。
 本作はそのシリーズの前日譚であるが、大体そのぐらいだけわかっていれば問題なく楽しめる作品だ。さらに、主人公側のボスがプロフェッサーX、敵側のボスがマグニートーとわかっていれば言うことない。
 若き日には共に手をとり戦ったプロフェッサーXことチャールズと、そのライバルのマグニートーことエリック。『ファースト・ジェネレーション』とは、この二人がなぜ決別し、いかにして敵対するようになったかを描く、スターウォーズで言うとエピソード1~3にあたる作品である。
 
 映画としては、チャールズとエリックの対照的な少年時代から始まる。第二次世界大戦末期、平和で裕福な家庭に生まれ育ち、能力を隠して大きくなったチャールズと、ナチスによりユダヤ人として収容所に入れられ、母親の死によって能力を開花させられたエリック。
 そして時は流れては1960年代。エリックの能力を目覚めさせた元ナチスの科学者であり本人もミュータントであったショウが暗躍し、米ソの対立を煽っていく。それに対抗するために、反発しつつも理解を深め、他の仲間を集めて共に戦っていくチャールズとエリック。この二人の微笑ましく・羨ましく・大変萌える「バディ(相棒)もの」としてストーリーは進行し、キューバ危機の瞬間を舞台に、物語はクライマックスの決断の時を迎える。
 
 『X-メン』の特徴として挙げられるのは、そのテーマ性だろう。本作だけを見ても、シリーズが人種差別問題をテーマにした、社会的な視点を持つ作品であることは容易に見て取れる。つまりミュータントとはかつてのユダヤ人であり、黒人であり、9.11以降のイスラム教徒であり、その他様々な被差別の者達のメタファーなのである。そのことは、ホロコーストがその後の人格に大きく影を落とすエリックだけでなく、チャールズの妹分で青い体のミュータント・ミスティークが肌の色で悩む、といったところでも明らかだ。 
 そう考えると、人間との共生を目指すチャールズはキング牧師、人間と闘争してミュータントの世界を目指すエリックはマルコムXに重ね合わせられる。
 
 であるからこそ、本作の見所は、テーマ的にも、「X-メン」シリーズの謎として見ても、その二人の決別する瞬間にある。
 母親の仇であり最大の標的だったショウと対峙し、復讐の感情に流されるエリック。そして戦っているミュータント全員に向けられた人間達の敵意をスイッチに、エリックとチャールズの信念の違いが決定的になってしまう。その瞬間におこった事故と、それによる二人の決別が、キツすぎるくらいに苦しい。正直、最近見たどんな恋愛映画の別れのシーンより胸に迫る。例えるなら、どちらも自分と親しい友人カップルがどうにもならない喧嘩別れをする様を見るようなキツさだ。
 「決別して、悪に堕ちる」ものの代表例としては、『スターウォーズ』シリーズのダースベイダーことアナキンが挙げられる。しかし、アナキンとオビ=ワンの決別よりも両者の距離が近いのに、より深い断絶が感じられたのは、前述の冒頭のシーンで描かれた二人のミュータントとしての目覚めた方、刷り込まれてしまった原風景の違い故だろう。そしてここから物語をはじめた本作の構成の賜物だろう。
 もはや差別する側・される側の間だけでなく、志を共にした被差別者の間でも起こりうる断絶。それはともすると人類皆の間に横たわっているとすら感じられ、この悲劇をより普遍的で切実なものにしていた。違う経験をしている以上、人と人は最終的には分かり合えないのだろうか。出会いや友情は、出自を乗り越えられないのだろうか。待ってくれ、違うって言ってくれ。別れ際のチャールズとエリックの表情を見て、そんな叫びが喉元まで出かかった。 
 
 ただ一点補足するが、本作は重苦しく陰鬱に終わる映画ではない。そんな決別の直後、エリックが有名な赤い兜を被り身も心もマグニートーになった瞬間こそ最高に盛り上がるポイントであり、筆者も心が痛いのと同時に、最高にアガってしまっていた。そんなバランス感覚の、「痛み」すらあくまで「娯楽」として描いた、優れたエンターテイメント作品であった。
■あとがき■
直した上で今思うのは、「絶賛しすぎ」感。あくまでそのWSでは「誰かに紹介する」という目的でのライティングなので、そんなにこき下ろす感じでもないんですが、にしてもホメすぎかなぁ…。あと、デカイこと言いすぎ感。もっと簡潔に、平易に、粋に、本質を捉えねば。あと長すぎな。
でもホントにラストシーンがキツくて且つアガって良い映画でした。