ご挨拶が遅くなりまして、そしてブログ自体だいぶご無沙汰ですみません。
アガリスクエンターテイメントが出場していた黄金のコメディフェスティバル(2014年9月18日~9月29日)は無事に全日程を終了致しました。
ご来場頂いたお客様、応援してくださった皆様、各出場団体及びスタッフの皆様、審査員の皆様に厚く御礼申し上げます。
そして、本フェスティバルは賞レースということで、観客投票と審査員投票でグランプリはじめ様々な賞を競い合っていたのですが、アガリスクエンターテイメント『出会わなければよかったふたり』は作品が優秀作品賞、冨坂友が最優秀脚本賞を受賞致しました。
他の各賞の受賞者は以下です。
~黄金のコメディフェスティバル2014 受賞者一覧~
《最優秀作品賞》(グランプリ)
ポップンマッシュルームチキン野郎『殿はいつも殿』(しんがりはいつもとの)
《優秀作品賞》(準グランプリ)
アガリスクエンターテイメント『出会わなければよかったふたり』
《最優秀演出賞》吹原幸太(PMC野郎)
《優秀演出賞》細川博司(バンタムクラスステージ)
《最優秀脚本賞》 冨坂友(アガリスクエンターテイメント)
《優秀脚本賞》吹原幸太(PMC野郎)
《最優秀俳優賞》わかばやしめぐみ(おぼんろ ウド役)
《優秀俳優賞》(五十音)
上杉逸平(バンタムクラスステージ 森ノ屋泉岳役)
末原拓馬(おぼんろ グギャ役)
土屋兼久(バンタムクラスステージ マネージャー役)
CR岡本物語(PMC野郎 塩麹宗肉役)
《鈴木聡賞》土屋兼久(バンタムクラスステージ マネージャー役)
《西田シャトナー賞》伊藤亜斗武(ゲキバカ)
《手塚宏二》賞
新原美波(ゲキバカ ミク役)
日高ゆい(8割世界 トモちゃん役)
《高校生審査員賞》ポップンマッシュルームチキン野郎
《観客賞》ポップンマッシュルームチキン野郎
9年前に、周りを演劇に囲まれていない環境で演劇をはじめ、と同時にド素人のまま劇団を立ち上げをはじめ、この度初めて賞を頂きました。 それが「黄金のコメディフェスティバル」というコメディの賞であることは大きな喜びです。
しかし、残念ながら最優秀作品賞(グランプリ)を受賞することが出来ませんでした。どう取り繕っても2位です。コメディ劇団を名乗ってやってきて、初めてこういったタイトルに絡めるタイミングで、いま一歩最優秀に届かなかったのがとても悔しいです。
また、脚本賞で最優秀を頂くことは出来ましたが、僕個人の力だとは全く思っていません。
こういう発言って授賞式につきものの常套句みたいなのでアレですが、今回の『出会わなければよかったふたり』は、本当に出演者に書かせてもらった脚本でした。
執筆段階から出演者がアイデアを出し、出来たものに口も出し、肉体化し、粘りに粘って、本当の意味で“皆でつくった脚本”です。
だからこそ、「皆で勝ち取った最優秀脚本賞」としては嬉しく思う反面、その苦労・心配・迷惑をかけた皆を俳優賞や最優秀作品賞で壇上に上げることが出来なかったのは心底悔しいです。
しかし、こうしてフェスティバルに参加して、今までアガリスクを観たことがなかったお客様にご覧頂き、前から見て頂いているお客様に応援して頂いたのは大きな喜びであり収穫でした。
そういった経験や頂いた賞を糧に、そして負けた悔しさをバネに、これから劇団を飛躍させることで、出演者や応援して下さったお客様への恩返しにしようと思います。
これからも、この経験に恥じないように、且つ、おもねらないように、王道で、ちょっとだけ捻くれていて、なにより笑えるコメディを作っていきたいと思いますので、ぜひ皆様今後とも応援よろしくお願いいたします。
※『出会わなければよかったふたり』イメージビジュアル(イラスト:沈ゆうこ)
※お客様が書いて下さったハイパー素敵なイラスト(イラスト:@chaki_kkk様)
以下、せっかくの個人ブログなので私見ですが正直なところを書きます。
言いたいこと書きたいことがありすぎるのだけどまとめられそうにないので箇条書きで行くよ。ただの備忘録になるかも。文体も変わるポヨ。
【作品について】
●まず、初見のお客様が多かった今回のフェスティバルで、観客の皆さまにけっこう愛されたというのは嬉しい(風の噂で聞くと、観客投票でPMC野郎と2団体ダントツで競っていたとかいないとか)。
●また、以前からアガリスクを見てくださっている方々が、ウチの2位を我が事のように悔しがってくださったということ、そこまで応援してくださっていることが、とても嬉しかった。
●拙作を何年も前に見たっきりだったおぼんろの末原拓馬はじめ、演劇を最前線でやっている人、そしてシチュエーションコメディを愛する方々から高めの評価を受けたのも嬉しい。
●ただ、賞を頂いておきながらアレなのだが、脚本としては「シチュエーションコメディの先を開拓する」って意味でも、「時間移動ものとしてのヤバさ」って意味でも、「物語として本当に自分の体重が乗った説を展開していたか」って意味でも、突出したものはなかったように思う。良く言えば手堅い、悪く言えば無難、というか。
●構成としても、あまり綺麗に設計された美しさはなかったのが事実。物語面から見た時の構成で言えば、PMC野郎の『殿はいつも殿』(そういやこれって超いいタイトルだよね)の方が整えられているし、シチュエーションコメディの機能としても、「二人を出会わせない」っていうベタな展開をすっ飛ばしている時点であまり機能的ではなかったりする。
●おそらく御好評頂いた要因は「コメディらしさ」だ。お話によって笑いが生まれており、物語とネタが同時に進行していたからだろうと思う。
●だったら、もっと物語を「主人公の選択」に出来たのではないか?という反省。そしてそれを笑えるネタとして表現するか、短時間にギュッと凝縮して出すことができたのではないか。
●色んな人から「ミユキ(タイムスリップしてきた元カノ)がひとり未来を知ったまま帰った方がグッとくるのでは?」と言われた。それは最初に考えて倫理面から「あかんやろ」と思ってやめたネタだけど、それをあくまで時間移動でいう「決定論」として使うならアリだったんじゃないか?という反省(何言ってるかわからないかもしれないけど、おれもあんまりわかってない)。
●ともあれ、そういった「悲劇」って方面の物語を最初から排除せず選択肢に入れてもよいのではないか?という反省。
●斉藤コータに俳優賞をとらせるくらいの演出をできなかったのが口惜しい。
●気づき。今回の作品を作るうえで改めて痛感した事実、シチュエーションコメディとは「レイヤー」である。転がって移動していくのではなく、レイヤーを重ねていくものだということ。
●気づき。場転は雄弁。
【フェスティバル全体について、また他団体の作品について】
●皆が一緒になって作り上げる、大変ピースフルなイベントだった。それは素晴らしいことだし、すごく居心地が良かった。
●その反面、「自分の考えるコメディとはこういうものだ」という思想をぶつけ合う戦いにならなかったのは、コメディ劇団が覇を競うイベントにしてはぬるかったんじゃないか?という疑問。そして事実それが観客にも伝わってしまっていた気がする。
●他団体と関わることで、演劇屋としての自己プロデュース、劇団としての組織力、観客へのサービス精神など、いわゆる「プロ意識」という面で、自分の足りてなさを痛感したし、とても勉強になったイベントだった。自分がいかにヘラヘラしたフリーターのまま(比喩ね。実際の収入源にかぎらず)芝居をやっているかを思い知らされた気がする。
●その反面、「こんな笑わせ方があったのか」「笑いと物語をこう使うのか」「こんな笑える俳優がいるのか」といった「コメディをつくる」という点で衝撃を受ける体験は少なかった。
●「物語を組み立てる」という点で言えばPMC野郎の吹原さんと互いの作品について話したことや、「演技について」ではTV収録時のCR岡本物語さんの芝居など、勉強することは沢山あったが、「人を笑わせる」という行為において刺激的な瞬間は少なかった。そして本イベントが「コメディフェスティバル」と名乗っている以上、それは自分にとっては残念だった。
●関係者が皆いい人で、プロ意識があって、尊敬もしているから心苦しいのだけれど、正直なところ、「コメディであること」をアイデンティティにしていない団体が多かったのが原因だと言わざるを得ない。演劇としてとても面白い作品も多かったが、残念ながら、参加団体を見て最初に「本当にコメディの祭典になるのか?」と危惧した第一印象を拭うことはできなかった。(もちろん今年一緒にやって出会えたのは良かったのだけど。)
●優勝したPMC野郎の収録を見学していて、多くのTVスタッフに囲まれた撮影で、主演のCR岡本物語さんの芝居がどんどん変わっていく様がとても印象的だった。それも、演出家の吹原さんやTV収録の笹木監督の指示によるものではなく、演技プランを変えていったのでもなく、アップで抜かれること、そのシーンだけをピックアップして撮られることで、どんどん「背負っていく」というか。TVと舞台の違い、「スター」の生まれる背景のようなものを、ちょっとだけ垣間見た気がした。勘違いだったらすいません。
●そして、「物語を背負う」ということについて考えた。それができなきゃ主役じゃないし、その筋道を示せなきゃ演出家じゃないし、自信をもって背負わせる言葉を書かないと脚本家じゃないよな、と思った。自分の過去の作品の中で、どれだけの作品でそれができていたかを振り返ると、正直、考え込んでしまう。
●舞台チーム、制作チームともに、スタッフの皆さんへの感謝の念は伝えても伝えきれないほどある。我々劇団側が入れ代わり立ち代わり劇場に来ては本番をやって帰るのに対し、ずっと劇場で仕事をしていてくれて、そのおかげでフェスティバルがまわっていた。演劇への愛、フェスティバルへの思い入れがないとできない働きだったのが誰にでもわかる。本当にありがとうございました。お世話になりました。
●そのうえで、やっぱり言わせてください。45分二本立てというなら全ての団体と一度は組みたい。戦いたい。現行の、2劇団1チームの固定された全3チームでもまわすのが大変なのはわかる。しかし、同じ観客の前で作品同士を戦わせる勝負をしないと、いくら開会式や表彰式、舞台裏での交流があっても、劇団として本当の交流とは言えないような気がする。
●といった思いを胸に、2015年の参加団体募集にもエントリーさせて頂いた。来年また出られるかわからない。どんな団体が集まるかもわからない。どんな上演形態になるかもわからない。だが、もし出させてもらえるなら、黄金のコメディフェスティバル2015実行委員の一員(参加団体も実行委員の一部になるのです)として「どっからどうみてもコメディのフェスティバルだった」と言われるようなものにしたい。そして参加団体として他がどうであろうと観客の感想を「笑った」の一語に塗り替えられるだけの、よりコメディらしいコメディを持っていきたいと思う。
アガリスク作品の出演者、各参加団体の皆様、スタッフの皆様、審査員の皆様、観客の皆様、あらためて、今年はありがとうございました。
そしてもしかしたら、来年もよろしくお願いいたします。