いまガチッと劇評書くリソースがないのだけど、Twitterで書ききれなかったことを残しておく。
感想文だしポエムだしチラ裏ですが。
『おおかみこどもの雨と雪』を観た。
『時をかける少女(2006)』『サマーウォーズ(2009)』の細田守監督作品だから注目作だし、個人的にも楽しみにしてたのだけど、そういう「作品の出来」とか「作品のつくり」とかじゃなく、個人的に喰らってしまった。
この映画は、「母と子の絆」とか「人間讃歌」とか言われていて、そこまで大それてなくても自分にとっては間違いなく「生活讃歌」に感じられた。
多少ドラマチックに脚色されてたり、美化された田舎暮らしだったりはするんだけど、普通に暮らしていくっていうことがとても美しく見せられる。
そしてそれが、いつか聞いたラジオで細田監督が言ってた「命がないものに命を吹き込むのがアニメーション」「それにより何気ない風景や動作がドラマチックに立ち上がっていく、それがアニメ的快感」なんだろう、と非常に納得した。
今回は、時もかけないし世界も救わない。「号泣!」とか「最っ高!」みたいに激しくはないけど、自分の中では細田作品で一番刺さった。
というのも、「日々を暮らしていくってそれだけで素晴らしいことだよ」って主張にあれだけの破壊力・説得力を持たされてしまうと、困るのだ。ちょっと首肯しそうになったけど、自分の立場的にそれはダメなんだ。
自分は基本的に中学時代も高校時代もそのあとも、なにかやりたいことや目標、簡単に言うと「企画」みたいなのが目の前に無いとダメなタイプで、あくまで日常はそのためのチャージ期間、ってスタンスだった。むしろ楽しみな「企画」のための対価、代償とすら思っていた。
だから、「やりたいことが出来ないなら生活も人生も意味が感じられない」(もちろん自殺願望なんてさらさら無いんだけど)とすら思っている人種だ。
だけど、最近離れて住んでいる家族に色々あったり、その他生活全般の条件を考えることが多く、そんな中で斯様な「生活讃歌」を唱えられると、しかもそれに喰らってしまうと、色々揺らいでしまう。
もちろん夢とか目標とか企画とか、そういったものと日々の暮らしがトレードオフか、っていうとそんなことは無いのかもしれないけど。
でも「生活を大事にしながら演劇もやってくよー」ってスタンスの人(正社員とかフリーターとか問わず)があまり好きじゃなかったり、というか信じてなかったりするし、そういった瞬間に何かの速度が落ちる気がして、じゃないな、自分の何かが揺らぐ気がしている。
なので、その完成度によって「日常大事」「家族大事」を信じ込ませたこの作品が、ちょっと憎くもあり、気になって仕方ない。
でも超好き!もっかい観たい!くそー!