『みんなのへや・改』終演しました〜そして『わが家』へ〜

だいぶご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません。

番外公演としてやっていた冨坂企画の『みんなのへや・改』が無事終了しました。
ご来場下さった皆様、関係者の皆様、誠にありがとうございました。

この企画、当初は夏と秋に予定していた外部の公演が流れたことにより「じゃあ自分で劇団メンバー以外との公演打っちゃえ!」と始めたものだったのですが、とはいえ演劇公演ってなかなか「ただの仕事」としてだけでは打てないものでして。色々カロリーがいるしね。

今年の夏・秋は劇団の長編公演を打たないで色々準備したり修行するシーズンだったので、演出家修行としてやることにしました。
6月や9月に講師をしたワークショップや、feblaboナイゲンでの皆へのアドバイスに続く、「ウケるためのあの手この手を伝える演出言語を獲得しよう」という修行。

月並みな表現だけど、とても勉強になったし、引き続き「デフォルメする」「絵のタッチというかペン先を鉛筆やボールペンからマジックペン級に太くする」という演技論に関心が出てきた。
登場人物としての心情とか反射で動く肉体みたいなのをキープしたまま、いかにフィクション値を高くできるか。
これがコメディに振り切る為には大事な気がするし、それができると演技の「腕力」みたいなのが上がる気がするんだよな。


さて、今回のメンバーのことを少し書きます。

江益凛…ストーカー役
この中で唯一の一度演出したことがある俳優。
アクティブで熱血漢で、端的にいうと「気合が入ってる」演劇人で、あとはもちろん笑顔が可愛いので、ナイゲンの3148とは違ってガンガン動いてニヤニヤ企む役をやった方がいいよなぁと思ってストーカー役をお願いした。
大人数でごちゃごちゃ喋るときの台詞の間とかニュアンスは苦戦していたけど、それを補って余りある作品冒頭のやりきり感に拍手。
初演でも結構長いこと一人で部屋をウロウロしてもらったのだけど、今回さらにその部分が膨らみました。

野村亮太(やまだのむら)…優也役
feblaboのナイゲン(2018年版)で知り合って、色々話をしてた(けど演出はしてない)俳優。今回は「思いっきり笑いを取ることに注力しようぜ」と思ってご一緒することに。
器用で引き出しが多いというか、基本的に上手い。あと誰かを好いてるより好かれてる方が似合うってことで、作中で想いを寄せられまくる男・優也に。
ついつい自然な反応をしすぎちゃうので「ファルス型シチュエーションコメディの嘘」の部分に苦戦してたけど、意図を伝えれば大体すぐ対応できたのがすごい。
物事を積極的に進めてくれるので、一家に一台というか、一現場に一人いると作品がグインといい感じになる。

石井智子…杏子役
実はスケジュールの関係で出演者募集のWSには来られなかったのだけど「とりあえず出たい気持ちだけは伝える!」という熱い連絡をくれまして。迷ったけど、別作品の映像などを見て「この作品にはこういう明るく楽しく女子感のある人が必要では…?」と思って出てもらった。
相手との自然なやりとりとか手触りみたいなものを重んじる人で、ウケるための段取りや、生理を無視した同時多発気味の会話には苦戦していたみたいだけど、絶対やらなそうな人だからこそ振り回されるのが面白い。
「…ゆっくりしよ?」「理由とかよくない?」の小悪魔感のデフォルメ具合が絶妙。絶妙にリアルで、絶妙にバカっぽい。素敵。
初演からセリフあんまり変わってない割に、一番キャラクターが変わった役になった。

坂内陽向…沼田役
ワークショップでは、笑いを取りたいところで色々仕掛けてて、でも絶妙にそれが空回ってて、その感じが逆に面白くて「おっ」と思って、長いこと一緒に稽古するとその感じすら使えそう、と思って出てもらった。
正直、このメンツの中だと決して器用なタイプではないし、謎の力みによっておかしなリアクションになったりと苦戦しまくっていたけど、その「信じ切っちゃう」「全部betしちゃう」演技は観客に嫌われないタイプだと思う。

平田純也…賢一役
年齢的には座組で最年少だったけど、若い頃からやっててキャリアもあるし、あとこういうコメディ的な処理がとても器用な人。ワークショップで一度見ただけで「できるやつだぞ」というのはわかったけど、いざご一緒して見たら演技以外も大変気が利いて大人な、出来た人だった。
具体的な指示ってよりも「こういう要素が欲しい」ってオーダーすると上手いこと色々改善してくれる役者で、ちょっと前に自分演出で一人芝居やったって聞いて納得したけど、演出的な、客観視が出来ている人だなぁと。
たまに演出家みたいな目線で「おい自分の役忘れてるやろ」になるのが面白い(いや、ダメなんだけど笑)

渋谷裕輝…泥棒役
ワークショップに何回か来てくれて、真っ先に「あっこの人うまい」と「最近よく目にするお笑い芸人の誰かに似てる…!」の二つの感想を覚えた。
なんというんだろう、パッとできる器用さと共に「やらなさ」というか「恥の概念」をすごく強く持ってる人で、そこが信用できる。
だからこそ、つまみを思いっきり捻って、ここぞというところでエネルギーを放出すると面白い。
見た目も物腰もめちゃくちゃ落ち着いているんだけど、YouTuberが大好きなところに「あぁ若者だったんだ…」と思い出させられて落ち着く。

中田由布…大家役
役割のレベルで、初演と最も大きく変わったのは、この「大家」という役だと思います。ちょい役だったところから、このお話を最後に締めくくるオチを担う役になった。
最初は「一人だけちょい役って脚本として上手くないよなぁ」「“みんな”の部屋じゃないもんなぁ」という作家的な思惑からだったんですが。中田さんの最後の笑顔の威力(可愛らしさだけじゃなくて、キレの良さというか、なんだろう、威力としか表現できないんだよな)で「これは…!」と決まった。
ふんわり穏やかなようでいて、共演者が悩んだ時にもマジで頼りになる先輩でした。


愉快なメンツで、ただのコメディを、時間かけてつくる。
という贅沢なことをさせてもらったので、自劇団での巨大な山脈みたいな作品作りに戻ります。

各メンバーの作品振り返りは こちら で、
冨坂の作品振り返りは こちら で喋っています。

ご興味あればどうぞ。