母を納骨してきた話

本日、母を納骨してきた。

SNSで書くかどうか迷ってて(書くべきじゃないとは全然思わないんだけど、必要あるか?と思って)、その都度「今は別の告知ごとがあるから」と先送りにしてきたけど、実は今年の5月に母が亡くなった。

2年前の春頃にガンが見つかり、手術をすることになったのが確か『わが家〜』本番中だったかな。とりあえず術前に立ち会ってから俺は本番があるので劇場に向かい、マチネだけ本番を終えて帰る途中に、電話で「手術ができないレベルになってた」と余命うんぬんの話を聞いた。

長いこと闘病(というと大袈裟か)していて、余命も当初「年で考えない方がいい」と言われてからだいぶ記録更新していたので、本人も覚悟ができていたのかもしれない。それを聞かされていた我々もある程度覚悟はできていたのかもしれない。

こんなこと言うとまたサイコパス扱いされそうなんだけど、正直言うと、悲しいのかどうかわからないまま、ここ5ヶ月ほど過ごしている。

それが覚悟によるものなのか、事実を受け止めきれてなくて悲しむ段になっていないのか、ひたすら俺の感情が鈍くなっているのか、判然としない。
もちろん葬儀の時のいろんな場面や、献身的に世話してくれた担当の看護師さんの語るエピソードなどには感涙することもあったけど、それすら「物語」として感動してるだけなんじゃないの?という気すらしてきて、母親との死別を悲しみっつーか…自分の痛み?として認識できていない。

3ヶ月くらいの間、亡くなった母親が住んでたマンションで暮らしたんだけど、その時には認識できなかった。
その後引っ越して、遺影や位牌とも離れて過ごしても、認識できなかった。
で、納骨してひととおりの儀式が一段落した今になっても、認識できていない。

いや、もうほんと。
じゃあいつなんでしょうね。

皆が皆、同じようなタイミングで同じように悲しまなければいけない、と思ってるわけでもないし、「人それぞれでいいんだよ」なんてのはわかってる。
悩んでるわけでもない。
でも、なんというか、この現時点での消化不良感を言語化して残しておかないといけないな、と思ったのだ。

ちなみに納骨は千葉の山奥で樹木葬で行った。
幼稚園教諭をしながら自然科学系の教育に熱心だった母の意思によるものだ。
「戒名とかいらない」「お寺とのお付き合いとかしなくていいわよ」派の母の意見にはマジ同意なんだけど、そこらへんの考えを抜きにしても、とてもいい場所だった。
春には山桜が咲いて、夏には近くの河原に野生の蛍がいるらしい(ホントに千葉かよ)。
職員の人もお墓の人ってより環境保護のプロって感じで、今日なんかは動植物の話を聞いている時間の方が長く「あれ、理科の授業かな?」と思ったほどだ。

いい話で締めたいわけでもないし、悲しんでない理由をそこに求めるわけでもないんだけど。

超親不孝者だったけど、最後の最後に「よかった」というか「ギリ間に合った」ということが二つある。
最新の作った芝居を見せられたことと、最後にちょっとだけ一緒に暮らせたことだ。

母は劇団の公演をいつも見にきてくれていて、ほぼ唯一の旗揚げ公演から見てるお客さんだった。
で、1月2月と入退院を繰り返している中で、なんとか具合が良くなって奇跡的に2月の『卒業式、実行』を見に来ることができたのだ。
もはや見に行くのが目的化してたかもしれないから、正直どのくらい作品として楽しんでくれたのかは今となってはよくわからないけど(基本うちの母の評価は甘い)「見に来れてよかった」と言ってたので、良かった。

その後、再度入院することになり、母が飼っていたウサギの世話を兼ねて、公演を終えた暇人かつノマドな俺が母のマンションに住むことになった。
そしてそこに母が退院してきて、もしもの時に備えて一緒に住むことになったのだ。
結果的に10日くらいしか一緒にいなかったけど、20歳で実家を出て以降、久しぶりに一緒に寝食を共にできたのは良かった(あ、寝食でもないか、向こうは寝てる時間多かったし、ほとんど固形物も食べなかったから)。
今にして思うと、末期ガンの母親が寝ている部屋のすぐ隣の納戸で、机を持ち込んでくだらないコントを書いているのはとても興味深いシチュエーションだと思う。お芝居っぽいよね。

そんなこんなで、特にオチがあるわけでも結論があるわけでもない。
もっと「母への愛」みたいなのを書けたらいいんだけどね(ちなみに屈折してるわけでもギクシャクしてたわけでもない、むしろ仲はいい)。
でも、今そういうノリじゃないんだよなぁ。
なので、現時点ではこんな感じ、というのを書いてみた。

あ、そうそう。今度やる『わが家の最終的解決』は、手術があったので唯一母に見せられなかった演劇公演なんだよな。
再演するんだけどな、ちょい間に合わなかった。

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